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走行サーベイシステムKURAMA (自動放射線量計測システム)の開発秘話

人命保護のために急ぎ世に送り出したKURAMA。
IoTの先駆けとしてリスクの可視化に威力を発揮

走行サーベイシステムKURAMA (自動放射線量計測システム)生活圏における空間の放射線量率を計測する自動放射線量計測システムKURAMAは、様々なニーズに応えるなか、現在、走行サーベイシステム KURAMA-Ⅱ(車載型)、KURAMA-m、Pocket(歩行型)、KURAMA-mini(ハンディ型)と、状況と用途に応じた製品が揃うまでになっています。見えない放射線量を可視化する「目」として各所から高い評価を得るKURAMAがここまで普及した背景はどのようなものなのか。社内で中心的な役割を担った開発設計課の安岡忠明氏に話を聞きました。

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東日本大地震の発生がすべての始まり

——
まず、開発のきっかけを聞かせてください。

安岡
きっかけは、やはり東日本大地震の発生でした。ただ、線量を測る機器の開発構想は以前からありました。東日本大地震の後、京都大学の谷垣先生が誰でも放射線量を測れるツールの試作機を作られ、その量産化に向けて白羽の矢が立ったのがハードウェアの迅速な開発力に定評があった日本NI(日本ナショナルインスツルメンツ)社でした。そして、日本NI社からインテグレータとして紹介されたのが当社なのです。

——
日本NI(日本ナショナルインスツルメンツ)社の推薦があったのですね。

安岡
はい。当時はまだゴールドアライアンスの認定を受ける前でしたが、それまでにも数々の実績をあげていたことが日本NI社の目に留まっていたのだと思います。

——
放射線を相手にすることに不安はありませんでしたか?

安岡
正直なところ、ありました。ただ、放射線が恐いというより、専門性が高くて難しいのではないか、といった不安の方が大きかったですね。
でも、谷垣先生と繰り返し打ち合わせを行い、いろいろと調べていくうちに段々と恐怖心は薄れていきました。

京都大学との連携で量産化に対応

——
京都大学側の要望はどのようなものだったのですか?

安岡
電源を入れたら勝手に計測が始まり、自動でデータがサーバーに飛んでいき、そして誰でも使えるものでした。

——
なぜ、誰でも使えることにこだわったのでしょう。

安岡
例えば放射線の存在が考えられる地域のバスやクルマに計測器を設置すれば、エンンジンをかければ自動的に起動して計測が始まり、データがサーバーに蓄積される。専門的な知識がない人でも普段の生活の中で計測ができれば、生活圏の線量をくまなく調べることが可能になるからです。

——
京都大学とはどのような関係のもとで進めたのですか?

安岡
設計と最初の試作機の製作は京都大学だったので、当社は京都大学からライセンス供与を受け、改良と量産化を担当しました。

現実の放射性物質対策ゆえに時間との戦い

——
プロジェクトで難しかったことは何ですか?

安岡
とにかく時間との勝負が大変でした。2011年3月に東日本大地震が発生して東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質の漏れが深刻な問題になっていたなか、同年12月に開発が始まりました。要請は自動化された放射線量計測システム100台の納品です。放射能汚染という人命に関わる問題が実際に起きているわけで、とにかく急いで量産化の開発にあたり、なんとか2ヶ月余り後の3月に納品できました。

——
大震災が起きた1年後には納品できたのですね。スムースに事は運んだのでしょうか?

安岡
いいえ、トラブルの連続でした。長時間の連続運転はやはり機器への負荷が大きくて計測テストが中断してしまったり、サーバー1台に100台分のデータを回線で送る際には転送量の増大でパンクしたりと・・・。

——
短期間に納品できた裏には多くの苦労があったのですね。そういった問題をクリアして納品できた時の気持ちはいかがでしたか?

安岡
もう、ホッとした、のひと言つきます。納品先が国の原子力研究開発機構だったこともあり、責任感からのプレッシャーは相当なものでした。最終的には原子力研究開発機構に 130台、福島県に70台納めました。

国の機関から高い評価を獲得

——
国側の評価はいかがでしたか?

安岡
KURAMAの計測データは、様々な端末からネットワーク経由でリアルタイム共有でき、マップ上にプロットするなどの表示が可能です。納品時には、先方が今まで手動で使っていた計測器と同じデータがKURAMAで取れたことが高く評価されました。その後、国からの情報としてKURAMAの計測結果が公開され(※1)、その画像を目にした時は今までとは違った大きな達成感を感じました。地方の一人の技術者として、この公開は被災者の方の手助けになれたことの証であり、とても感慨深いものがあります。

IoTの先駆けの経験を次に活かす

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今後の展開としてはどのようなことを考えていますか?

安岡
現在では歩行型やハンディタイプといった派生品もラインナップされています。また、KURAMAが持つ「計測〜GPSによる位置情報〜データ転送」の機能は汎用性が高いので、様々な用途で力を発揮しています。

——
ネットを使ったデータの応用、活用という点から見ると、ここ数年で話題になっているIoTそのものと言えますね。

安岡
そうですね。当時は、「3G回線を使ってデータを集める」と話すと誰もが首をかしげたり懐疑的な反応をするばかりでした。それが今では一般化しているわけで、どこか不思議な感じがします。

——
今回のKURAMAで得たものはかなり大きいものがあるのではないですか?

安岡
はい。KURAMAで試行錯誤した経験や考え方は様々な分野で展開できると思います。データ比較はやはりデータ量が物をいうので、肝心のデータ計測の段階で何かが起こってしまうと大変です。この技術を活用すれば、モニタリング機器に不具合が起きたとしても遠隔で操作、修正ができるので、データ収集が始まる前に対応が可能になるなど大きなメリットがあります。

——
IoTの根幹に当たるデータ取得、送信の分野に強みを発揮できるのですね。いろいろと興味深いお話をありがとうございました。


※1 放射線量等分布マップ拡大サイト
https://ramap.jmc.or.jp/map/
(走行サーベイはKURAMA-IIでデータ取得が行われています)

※その他関連サイト
日本NI、「グラフィカルシステム開発コンテスト2014」の受賞作品を発表
http://www.ni.com/newsroom/release/ni-announces-2014-gsd-achievement-award-winner/ja-jp/

【システムインテグレーション部門優秀賞】
株式会社松浦電弘社 開発設計課 安岡忠明氏 「歩行型放射線量自動計測システム KURAMA-m」
http://sine.ni.com/cs/app/doc/p/id/cs-16355

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